【年金問題】財政検証の仕組みと今後の取組みを解説
こんにちは、ばらかん(@barakam63)です。
今回は、財政検証についてお話しします。
財政検証は将来受け取れる年金に関わる重要なお話しになるので、「将来年金って受け取れるの?」と不安になっている方はぜひ読んでみてください
20代、30代の現役世代の方々にとってはなおさら興味のある話かと思います。
① 財政検証って何?
② 財政検証を理解するためのポイント
③ 将来、年金はいくら受け取れるのか
財政検証とは
財政検証は「将来の年金をいくら受け取れるか」を厚生労働省がシミュレーションしたものです。
また、シミュレーション結果をもとに年金の財政状況に問題ないかも確認しています。
厚生労働省が5年に1度行い、検証結果を公開しています。
財政検証を知る上で3つの言葉を知っておく必要があります。
① 所得代替率
② マクロ経済スライド
③ スライド調整率
所得代替率
所得代替率は「年金を受け取り始める時点(65歳)の年金額が、働いている現役世代の手取り収入に対してどのぐらいの割合か」を表す数字です。
例えば、65歳になって月15万円を年金としてもらう場合、その時の現役世代の平均月収(手取り)が25万円としたら所得代替率は60%になります。
ただし、注意したいのは、所得代替率を求める場合にはある仮定があります。
それがこちらです。
① 年金受給額は(夫婦2人の基礎年金 + 夫の厚生年金)で計算
② 現役世代の月収は、男子の平均月収を基にしている
つまり、独身の場合などその人の環境によって所得代替率は変わってきます。
マクロ経済スライド
マクロ経済スライドとは、年金の給付基準を調整する仕組みです。
この制度は、被保険者(年金を負担する現役世代)の負担が大きくなりすぎないように調整することが目的です。
マクロ経済スライドという仕組みが生まれる前までは、年金の給付額は賃金や物価の変化に合わせて調整されていました。
しかし、マクロ経済スライドを導入したことで賃金や物価に加えて、被保険者数(年金を負担している現役世代)や平均余命を考慮して年金の給付額を算出しています。
被保険者数や平均余命を考慮した指標をスライド調整率と呼びます。
・年金をはじめてもらうとき
→ 現役世代の給与の変化に合わせて改定
→ 給与が高くなると、給付額も上がる
・年金をもらっている途中
→ 物価の変化に合わせて改定
→ 物価が高くなると、給付額も上がる
・年金をはじめてもらうとき
→ 給与の変化と被保険者数、平均余命を考慮して決まる
→ 給与の伸び率 - スライド調整率
・年金をもらっている途中
→ 物価の変化と被保険者数、平均余命を考慮して決まる
→ 物価の伸び率 - スライド調整率
上記の説明で分かる通り、年金の受給額に直接影響するのはスライド調整率だと分かります。
マクロ経済スライドはあくまで年金受給に関する仕組みになります。
つまり、「マクロ経済スライドとは、スライド調整率を使って年金受給額を調整する制度」となります。
スライド調整率について詳しく説明していきます。
スライド調整率の決め方
年金の受給額は現役世代の給与と物価、スライド調整率によって決まることを説明しました。
では、スライド調整率はどのように決まるかというと、以下の2つです。
① 被保険者数
→ 働いて年金を払っている人の人数
② 平均余命の延び
また、スライド調整率と被保険者数、平均余命の関係を表でまとめました。
被保険者数、平均余命の変化 | スライド調整率の変化 |
被保険者数が増加 | スライド調整率は減少 |
被保険者数が減少 | スライド調整率は増加 |
平均余命が増加 | スライド調整率は増加 |
平均余命が減少 | スライド調整率は減少 |
つまり、少子高齢化が進み現役世代が減少したり、平均余命が延びるとスライド調整率は増加します(今の日本みたいな感じ)。
したがって、現在の日本ではスライド調整率の値が徐々に大きくなることが想定されます。
ということは、給与や物価が一定の場合には、将来もらえる年金額は徐々に減っていくと考えられますね(あくまで簡単な仮説の話しです)
所得代替率とスライド調整率の関係
財政検証は、所得代替率とスライド調整率がポイントであるとお話ししました。
そして、所得代替率は年金の給付額と現役世代の月収に関係があることを説明しました。
年金受給額 ÷ 現役世代の平均月収
また、年金の給付額は給与水準と物価、スライド調整率が関係することを説明しました。
(給与上昇率や物価上昇率) - スライド調整率
さらに、スライド調整率は被保険者数と平均余命で決まることを説明しました。
したがって、被保険者数が減少し、平均余命が延びると仮定した場合は以下のようになります。
被保険者数が減少、平均余命が延びる
→ スライド調整率が上昇
→ 年金給付額が減る
→ 所得代替率が減る
※この仮定はあくまで、所得代替率とスライド調整率の関係性を説明するものなので、日本の将来がこうなると説明しているわけではありません。
厚生労働省の検証結果
まず、厚生労働省の基本方針として「所得代替率は50%を下回らないようにしましょう」というのがあります。
というのも、「所得代替率が50%を下回る = 年金受給額が少ない」という基準にしているからです。
50%を下回ると見込まれる場合には、給付のあり方やどこから年金のための費用を捻出するか等を検討します。
ちなみに、2019年度の所得代替率は61.7%となっています。
2019年8月の検証結果
2019年8月に厚生労働省から財政検証の結果が発表されています。
経済成長や労働者数で複数ケースに分けて発表しています。
想定する状況 | 検証結果(概要) | |
ケースⅠ | 経済成長と労働者数が増加 | 所得代替率は50%以上を維持。 |
ケースⅡ | ||
ケースⅢ | ||
ケースⅣ | 経済成長と労働者数がある程度増加 | 2040年には所得代替率50%を切る。年金額も減少。 |
ケースⅤ | ||
ケースⅥ | 経済成長と労働者数の増加が無い |
「日本経済大丈夫?」の状態なので、年金以外も対応が必要になっている。 |
「厚生労働省 : 2019(令和元)年財政検証結果のポイント」より作成
これに対してどのような対策を考えているかも「2019(令和元)年財政検証結果のポイント」にて公表されています。
主に以下になります。
① 被保険者数を増やす(対象者の拡大)
② 就労期間の延長
③ 基礎年金等の加入期間の延長
ざっくり要約すると、「現役世代が年金を払う期間を延長させて、受給する人の年金を確保しよう」となりますね。
現役世代からすると、なかなか痛い話ですね。。。
今の若い世代が年金をもらう年になったらどうなるか
厚生労働省が発表している検証結果から、所得代替率と年金受給額が今後どのように推移していくのかを計算しました。
前提として、現役男子の平均手取り月収を2019年と同じ35.7万円として計算しています。
まず、所得代替率を見てみましょう。
この結果からわかるように、経済成長が見込めるケースⅠ、Ⅱ、Ⅲだとしてもギリギリ50%を超えるという状況です。
正直、「今の61.7%という所得代替率を下げて、将来の年金に回せば良いのでは?」と思うところではあります。
次に、年金受給額です。
今の20代、30代の人たちが65歳になるのは大体2060年前後なので、退職後の年金受給額は13.1 ~ 18.5万円/月になります。
2019年と比較すると、最悪の場合で約9万円/月も受給額が減ることになります。
この結果を見て、若い世代は将来に向けて何をするべきかの個人的な考えを書いていきます。
現役世代は何をすべきか
財政検証の結果は、「将来年金もらえなくなる(少なくなる)」が数字で出てしまった形になりますね。
さらに、経済成長を仮定した上でも所得代替率が減っているので、現在の制度のままだといま年金をもらっている年代に比べたら老後の生活水準が下がるとも考えられます。
そのため、いまの20代、30代は資産運用など何かしらの方法で将来の資産を大きくすることが大事になります。
個人的には定年が延びて、働く時間が増えるのも嫌なので資産運用をしています。
資産運用の方法としてメジャーなのが確定拠出年金とつみたてNISAでしょう。
個人的にはまず、確定拠出年金から始めてみるのが良いと思います。
確定拠出年金については以下の記事で詳しく書いているので、ぜひ読んでみてください。
つみたてNISAについては以下の記事でまとめています。ただ、個人的には確定拠出年金がおすすめです笑
まとめ
ここまで、財政検証とその結果を踏まえた今後の取り組みについてお話ししました。
まとめると以下のようになります。
① 財政検証は、5年に1回将来年金がどのぐらいもらえるかをシミュレーションする取り組み
② 所得代替率とマクロ経済スライドがポイント
③ 現役世代が年金をもらうときは、いま年金をもらっている世代よりも下がる可能性が大
④ 将来の年金資金のために、現役世代の定年が延びる可能性が大
少し難しい内容だったかもしれませんが、少しでも財政検証の仕組みや将来の年金への理解に役に立てたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
ではでは、('ω’)ノ
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